なぜサブプライムローンと大企業の買収ローンが同じリスクなのか
世界中にサブプライムローン問題が広がっている。
だが、いまや「サブプライムローン問題」ではなく、「サブプライムローンに端を発した金融問題」になっているというべきだろう。
アメリカの低所得者がローンを踏み倒すことと、大企業の買収が何か関係あるだろうか?
日経では、「サブプライムローンと他の商品が同様のリスク」という言い方をしていた。
本当は少し違うかもしれない。
「サブプライムローンの市況の悪化により、企業買収のためのローンなどの評価を同様に下げざるを得なかった」ということだろう。
なぜ評価を下げるのか。これは証券化と深くかかわっている。
基本的にローンは満期まで保有するものであり、時価会計(mark to market, MTM)にはなじまない類のものといわれる。
ところが、証券化を前提に出すローンの場合、証券化の時点で売却益や売却損が生じる。こういう短期保有のものであれば、常に時価会計せよ、というのが現在の趨勢だ。
さて証券化するためのローンの時価会計というのはどういうものだろうか?
それは結局、証券化された商品のトータルの価格から算出することになる。
たとえばあるローンは証券化した場合、格付けAAAが50%、AAが30%、BBBが10%、残りは無格付けということが想定される場合、そうやって証券化された商品の価格を計算し、それの合計をもってローンの時価とする。
マグロ一匹の在庫の価格を考えるときに、切っていってトロや赤身などの合計金額をもってマグロ一匹の在庫の時価と考えるようなものだ。
こういう環境下において、証券化商品の市場性が急激に下がっている。 平たく言えば、AAAの証券でも売れなくなってきているのだ。金融的にいえばスプレッドが開いている。 以前なら基準金利+0.3%あれば十分販売できた証券が、今では基準金利+0.8%でも売れなくなってきつつある。 スプレッドが開くということは価格が下がるということだ。
それによって、証券化後のトータルの価値が下落する、つまりローンの価格(時価)が低下するということにつながっていく。
サブプライムローンの証券化商品だけでなく、たとえばLBOローン(企業買収のためのローン)の証券化商品(CDO)のAAA部分であってもスプレッドが開いている。
その結果、そういう金融資産も、時価を切り下げる必要が出てしまうのだ。