サブプライム問題ではなくて証券化問題であること
いまや問題はサブプライム問題ではない。証券化問題なのだ。
証券化といってもデットの証券化に限った話としておこう。
日本だと証券化というのはいろいろな意味でかっこよくつかわれている。
そんな記事を8年前に見た。
記事引用を考えたがアドレスが見つからないのでパス(笑)。
いずれにせよ、サブプライム問題というと、住宅ローンをなんとかして借り手の救済を図ればいい、と考える人たちが多いだろう。
とりあえず米国政府の対策もそれがメーンだ。
それはべつに間違いではない。
だが、それだけですべては解決しない。
結局、いま問題になっているのは、証券化された商品に対する信頼性なのだ。
それは結局「流動性」に尽きる。
どんな良いものであっても、転売ができない、価格がつかないということであれば、客観的な価値を主張することができない。
法隆寺の五重塔を時価評価してもあまり意味はない。転売できるものではないからだ。
もともと、金融商品の価格の考え方というと、その商品の将来キャッシュフローを期待リターンで割り戻したもの、ということがいわれる。その際のディスカウントレートにおいては、たとえば流動性プレミアムが付与される。
現在、その流動性に危機がおきている。
たとえクレジットがよいものであっても、売れないのだ。誰も買わないから。
そうなると、どんな優良な資産であっても意味がなくなってしまう。
時価評価をする、となるとノービッドだったりそうでなくても額面の80%でしか売れなくなってしまう。
ある債券の格付けがAAAであっても同じことだ。
保有し続ければおそらく元本は還ってくる。
そこには変化はない。
だが問題なのは、その場合でも、その債券を売ることができない、ということだ。
誰もそれを買わない。セカンダリーマーケットがない、ということになる。
現在、日本の超低金利のまっただなかで、格付けがシングルAなら3.5%で投資できるものがたくさんある。
証券化商品だ。 CMBSなら4%以上でも買える可能性が高い。
だがイールドがほしいはずの金融機関は買わない。
なぜか? 流動性がないからだ。 元本が返ってくる蓋然性が高くとも、結局セカンダリーマーケットがないということになると価格がいくらかわからない。
下手をすると購入価格から50%割引になってしまうかもしれないのだ。
これはクレジットの問題ではない。
リクイディティの問題なのだ。
イベントが起こると、Flight to qualityが起こるとよく言われる。
だが昨年からの一連の動きはそうではない。
今起こっているのは Flight to liquidity なのだ。
売れない在庫を抱えた証券会社は悲鳴を上げている。
そして年度末のボーナスも支払われ、各社は一斉に人員整理をしている。
東京でも。
昨年のうちに、RMBSのビジネスオペレーションをまともにやっている東京在の証券会社はほとんどなくなった。
M社はCMBS部門を閉鎖した。
MO社はCMBS部門の従業員の三分の二をカットしたという噂だ。
L社も大ナタを振るっている。
C社も今後どうなるか見えない。
結局東京のオペレーションがまともだったとしても、彼らのボスがすでに首になってしまっているケースすらあるのだから。
それに東京のオペレーションだって盤石ではない。
在庫のライトダウンがメルトダウンとなり、首の問題だけでなく存続の問題が起きてくる業者は、これからも出てくるだろう。