証券化商品のリスク開示に関する日経記事

今朝の日経を読んで驚いた。
金融庁は正気か?それとも、日経の理解が誤っているのか? 
証券化商品の市場をつぶしたいと思っているのだろうか。

以下誰も読まないと思うがひとりごと。

「再証券化」であればリスクが高く、裏付け資産がわかればリスクが低いなんてことはない。
もともとそのために格付けがあるわけだし。(わかりにくい、というのはまあ合意できないことはないが。)

裏付けとなるローンが住宅ローンであったとしても、切り分け方でリスクは異なる(クレジットは同じだがスピードが異なる)。
だいたい裏付け資産の評価をしないといけないとなると住宅ローンの証券化商品はもともと買えない。1000本の住宅ローンの裏付け資産の評価?個別のLTVも異なるし期限も異なる資産をどう評価しろと? しかもそれをシニアサブに分けるとかREMIC的にPACのような商品をつくろうものならそれでもう投資家はお手上げだ。

>組成した金融機関がその証券化商品を保有しているかどうかの情報を求める。

これは、オリジネーターがその後に売却した場合にどうするのか?
それを期中でサービサーの報告義務として、そのサービサーの報告に基づいて記載させるのか?
それともオリジネーター(デポジター)に売るなという制限を掛けるのか?
完全にオンバラのファイナンスになるだけではないか。
オリジネーターがシニアを持っているだけでもいいのか、あるいはBピースの一部を持つだけでいいのだろうか。それこそBピースを売る自由を奪おうとしているのだろうか。

いずれにしても海外の証券化商品ではそれを追うすべはない。Bピースの投資家が誰であるかは機密情報だし。とすれば「組成した金融機関が保有しているかどうかは不明」と開示でいいのか?

>なかには劣後部分を含めて他の金融機関に売却されてしまい、組成した金融機関の責任が曖昧なケースもあるからだ。

組成した金融機関の責任というのは組成時のレプワラに反しない限りそこで終了する。明確だ。
損失が出ればその時の劣後の投資家が価値の毀損という形で責任を取る。

証券化商品を市場で売却できない流動性リスクについても情報開示を求める。
…なんといえばいいのか。

流動性リスクは何にでもあるのだ。
株なんてその最たるものだし。
それこそ、地方債にだってある。
社債にも当然ある。電力債の流動性リスクを見なさい!
はやりの仕組み債にも当然ある。
下手すりゃ一部の政保債にもある。

リスク管理体制が整っていない中小金融機関が複雑な証券化商品を購入し、損失を被るといった事態を防ぐ狙いがある。

そうですか。
では、フラット30の証券化商品も買ってはいけないのですね。
それとも、国策だからこれだけは良い?
電力債は流動性リスクがあるから買うべきじゃないですよね。
あ、全部有報で開示さえしていれば買ってもいいんでしょうか。
でも「将来どの程度の損失を被る危険性があるか」の開示って
「全額が損失になる危険がある」と電力債のポートフォリオに記載しちゃっていいんですかねえ。

証券化にかかわった者として、とにかく文字通りに受け止めてしまい、怒りと呆れで書いてしまった。
実際のところは、きっと何とかなると思うのだが。(いや、何とかするしかないだろう。)


http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C889DE1E7E3E1E5E5EBE2E0EAE2EBE0E2E3E39797E3E2E2E2
証券化商品のリスク開示を義務化 金融庁、金融機関に (日経)

2011/9/28 1:56

 金融庁は、金融機関が保有する証券化商品についてリスク情報の開示を義務付ける。将来、どの程度の損失を被る危険性があるかについて詳細な情報を求めるほか、証券化商品の裏付けとなる資産内容の把握も促す。企業向け融資の低迷や低金利を背景に、地域金融機関を中心に証券化商品への投資が拡大する可能性があるため、リスク管理の徹底を促す。

 金融機関向けの監督指針を改正し、2011年4〜12月期決算から適用する。08年秋の金融危機を受け、金融機関が保有する証券化商品については、11年12月末からリスク評価の方法が厳格化されるが、金融庁はこれにあわせて証券化商品の情報開示を強化する。

 金融庁がまず情報開示を求めるのは、金融機関が保有する証券化商品の内容。住宅ローンや自動車ローンなど、裏付けとなる資産を特定しやすい証券化商品なのか、複数商品を束ねて組成されている再証券化商品なのかを区別して、有価証券報告書に記載するように要請する。再証券化商品は裏付け資産の評価やリスクを把握しにくいケースが多いためだ。

 証券化商品を組成した金融機関の関与の度合いについても開示対象にする。具体的には組成した金融機関がその証券化商品を保有しているかどうかの情報を求める。証券化商品は相対的にリスクが低い「優先部分」と「劣後部分」に分かれている。一般的には組成した金融機関が高リスクの劣後部分を保有しているが、なかには劣後部分を含めて他の金融機関に売却されてしまい、組成した金融機関の責任が曖昧なケースもあるからだ。

 裏付けとなる資産が焦げ付いて配当が受け取れなくなる信用リスクだけではなく、証券化商品を市場で売却できない流動性リスクについても情報開示を求める。金融危機時には商品を売却しようとしても価格がつかず、金融機関が抱え込まざるを得ない状態に追い込まれた経緯がある。

 国内の銀行や信用金庫、信用組合保有している証券化商品は10年9月末時点で13兆円。金融危機後はいったん保有残高は減ったが、本業の貸し出し収益が低迷するなか、金融機関が証券化商品への投資を再開する可能性が高まっていると金融庁はみている。

 企業向け融資が伸び悩むなか、金融機関が余剰な資金を投資商品や国債で運用する傾向は強まっている。預金をどれだけ有価証券投資に回しているかを示す「預証率」は11年3月末時点で地方銀行が29%、信用金庫が28%で、10年前に比べて5〜8ポイントも上昇した。

 証券化商品の取引などについて、金融庁は現行でも一定の情報開示を定めているが、内容は保有残高などにとどまっている。このため情報開示の規制をより強化し、まず金融機関が商品性やリスクを十分に把握することを促す。リスク管理体制が整っていない中小金融機関が複雑な証券化商品を購入し、損失を被るといった事態を防ぐ狙いがある。